今年度の開講科目

本研究室で開講している大学院の授業科目をご紹介します。

2023年度授業科目

過年度の開講科目はこちらをご覧ください。

授業概要(シラバス)

生涯学習論基本研究Ⅰ(Theory of Lifelong Learning Ⅰ)

担当教員:牧野 篤

授業の目標・概要: 社会教育学・生涯学習論を学び、研究するための、院生各自の基本的な視点・研究の枠組み・方法論を形成するための基礎的な訓練とその発展を、文献の講読と検討およびフィールド調査によって、集団的に進める。ただし、コロナ禍の影響もあり、フィールド調査ができない可能性も高いため、基本的には文献講読とする。今年度は昨年度に引き続き「社会基盤としての社会教育再考」を大きなテーマにとりあげる。文献研究の中心的なテーマは「社会教育のとらえ返し」とし、戦後に構想され、急速に社会に普及した社会教育・生涯学習の理念や機能に対して、どのような議論がなされ、それがどのような社会的な要請を背景にしていたのか、その結果、社会教育や生涯学習の概念はどのように変容したのか、そしてそれはどう実践されてきていて、それを今度どう実践していくべきなのかをとらえ、社会教育・生涯学習の実践のあり方への理解を通して、教育・学習という営みと社会とのかかわりを理解する。臨時教育審議会の資料なども活用する。

授業の計画: 社会教育学・生涯学習論を学び、研究するための基本的な「構え」の形成とその展開を促すために、社会 教育学・生涯学習論とくに公民館に関する古典的な文献とともに、最新の研究成果をレビューする。さら に、フィールド調査を重ねることで、その応用を学ぶとともに、院生各自の基本的な研究の視点と枠組み を発展させることを支援する。調査報告書を作成することで、研究論文の書き方などを習得する。フィー ルド調査などを行いたいが、コロナ禍の状況下でもあるので、基本的に文献講読を中心に進める。基本 的に対面開講とするが、コロナ禍の状況によっては対面・オンラインの併用、またはオンライン開講へと 切り換える。リンクは、UTAS および ITC-LMS 上に記載する。また、対面参加に不安を感じる受講者に は、オンラインでの参加を認めるので、事前に連絡すること。

教科書:牧野篤『発達する自己の虚構—教育を可能とする概念をとらえ返す』(東京大学出版会、2021 年)を基本的 テキストとして使用する。各自準備しておくこと。

生涯学習論特殊研究Ⅰ(Seminar in Lifelong Learning Ⅰ)

担当教員:李 正連

授業の目標・概要:社会教育学・生涯学習論を学び、研究するための、院生各自の基本的な視点・研究の枠組み・方法論を 形成するための基礎的な訓練とその発展を、文献の講読と検討およびフィールド調査によって、集団的 に進める。

授業計画: 社会教育学・生涯学習論を学び、研究するための基本的な「構え」の形成とその展開を促すために、社会 教育学・生涯学習論に関する古典的な文献とともに、最新の研究成果をレビューする。

教科書:各テーマに応じて指定する。

生涯学習論特殊研究Ⅱ(Seminar in Lifelong Learning Ⅱ)

担当教員:新藤 浩伸

授業の目標・概要:文献講読を通じて、文化の変革・創造と生涯学習の関係について考える。

授業計画:文献講読を中心に進める。

教科書:授業開始時に示す。

排除型社会におけるコミュニティ、労働、学習
Community, Work, and Learning in the Exclusive Society

担当教員:大高 研道

授業の目標・概要:本講義では、現代社会の基本的特質を「排除型社会」として捉え、それらに対処するキー概念として注目 されている「コミュニティ」の姿および再編の方向性の検討を通して、学ぶことの意味について考えたい。 人間生活は他者との関係性なしでは成り立たない。災害時や高齢化社会における助け合いを想起する までもなく、そもそも「生きる」こと自体がさまざまな営みの連関の中で成立している。反面、生活の個別化 とともに人間関係が希薄化し、地域社会の衰退・崩壊は加速度的に進行している。講義では、今日の競 争社会によって失われつつある他者との関係性や人間性を回復させる砦としてあらためて注目されてい る「コミュニティ」の現代的な形およびそれらと密接な関連をもつ労働や学習のあり方について、労働者協 同組合(ワーカーズコープ)の実践紹介などを交えながら検討したい。

授業の計画
本講義は「第I部 社会的排除(第 2 回~6 回)」「第II部 排除型社会への対抗戦略(第 7 回~10 回)」 「第III部 地域学習を基盤とした知の創造過程(第 11~14 回)」からなる。
第1回:イントロダクション
第2回:コロナ禍と社会-命と暮らしを守る社会を取り戻す
第3回:社会的排除とは何か
第4回:社会的排除と 格差社会論争
第5回:社会的排除とリスク社会
第6回:社会的排除と貧困概念
第7回:排除型社会とコミ ュニティ
第8回:排除型社会における共同・協同・協働
第9回:社会的排除と闘う社会的企業-ワーカーズ コープと協同労働
第10回:協同労働が切り拓く未来
第11回目 地域学習を基盤とした知の創造過程
第12回目 協同労働の社会化と学び合うコミュニティ
第13回目 学びの主体から当事者へ
第14回目 総括 討論とまとめ

教科書:履修者の研究テーマ・関心が共有できた段階で、履修者と相談のうえテキストを決定する。

プログラム評価論(Theory and Methods of Evaluating Programs)

担当教員:安田 節之

授業の目標・概要:
教育機関や企業組織そして地域コミュニティには、対人援助・人材育成・組織開発・地域活性化などを目 的とした多種多様な実践活動が存在する。これらの実践・介入活動に対して説明責任や科学的根拠(エ ビデンス)が求められる時代となっている。本授業では、様々な実践・介入活動をプログラムとして客観的 に捉え、その結果や効果を評価し、活動の質向上につなげるための方法論を学ぶ。 プログラムの価値 は、経済的指標などで捉えることが困難な個人や集団に対する教育的・心理的効果として現れることが 多いため、社会調査・実験心理学・心理測定といった方法論との親和性が高い。この授業では、プログラ ムを客観化・可視化する手順をまず習得したうえで、具体例を通してプログラムを実証的に評価するため の方法を学ぶ。

授業の計画:
1.イントロダクション
2.プログラム評価の目的と評価者・ステークホルダー
3.プログラムニーズの種類とアセスメントの方法
4.ゴールの明確化
5.インパクト理論
6.ロジックモデル
7.個人・グループ発表
8.評価可能性アセスメントと評価クエスチョン
9.アウトカム評価の概要と評価指標の作成
10.実験・準実験デザインによるアウトカム評価
11.プログラムの導入(インプリメンテーション)評価とプロセス評価
12.評価アプローチ①(社会科学・理論主導 他)
13.評価アプローチ②(実用重視・エンパワメント 他)
14.評価報告書・技術報告書(テクニカルレポート)の内容と作成方法
15.総括

教科書:安田節之 『ワードマップ プログラム評価:対人・コミュニティ援助の質を高めるために』新曜社,2011年

生涯学習論論文指導 (Dissertation Research in Lifelong Learning)

担当教員:牧野 篤、李 正連、新藤 浩伸

授業の目標・概要:博士論文・修士論文をはじめとして、社会教育・生涯学習関連の研究論文を作成するための、研究方法 論検討及び執筆の指導を行う。 受講者による研究発表と相互の議論を通して、また先行研究の検討を 通して、オリジナリティある論文執筆のあり方について考える。 必要に応じて、個人指導・ゲストを囲む合 評会などを考えたい。

授業計画:院生諸君の必要に応じることを基本として、論文作成支援・論文作成指導を行う。個別指導と集団的な検 討・討議を通して、各自が研究方法論を鍛えるとともに、論文作成へのモチベーションを高め、維持しつつ、質の高い論文とはどういうものであるのかというイメージを作り上げる支援を行う。とくに社会教育学・ 生涯学習論は、研究対象が広く、特定の研究方法に依拠して研究を進めることができないため、研究の課題意識や対象によって研究方法をつくり、また組み換える必要がある。特に近年、研究の設計におい て、起点となるべき「なぜ」が問われず、「何を」から着手する傾向が強くなっているが、研究を深めるため にも「なぜ」という問いを設定することの重要性を認識して欲しい。院生それぞれの研究に即して、検討を進める。

教科書:必要に応じて適宜紹介する。